こんにちは、のりです。
2024年の年末にタイのクラビにクライミングトリップに行ってきました。(一応新婚旅行もかねていますが、メインの目的はクライミング!)
エメラルドブルーの海をバックに、巨大な石灰岩の岩をダイナミックに登る。ほんとに素敵なところで、クライマーにとっては楽園のような場所です。
この記事では、僕たちがクラビで登ったな中で、もっとも印象に残っていて楽しかったマルチピッチルート「Orange Chandelier」というルートについて紹介します。
アオナンタワーのマルチピッチクライミングについて
Ao Nang Tower(以下アオナンタワー)にあるマルチピッチルート「Orange Chandelier」(以下オレンジシャンデリア)は、拠点となるライレイやトンサイの街がある半島ではく、孤島にあります。
つまり歩いてアプローチすることができないので、カヤックなどで海を渡る必要があります。
日本でふつうにクライミングをしていたら、なかなか味わうことの出来ないアドベンチャー的な要素がアオナンタワーの一番の魅力。タイでマルチピッチルートを登りたい人は、MUST CLIMBです。
孤島といってもあまり遠くないので安心してください。地図をみてわかるように、トンサイのビーチから数百メートルの距離にあるし、よほど天気が荒れないかぎり波はそんなに高くなりません。
3ピッチ全てがスポートルートで、グレードは6b,6b+,6c。(ちなみに6cはデシマル換算で5.11b/cくらいです。)
ボルトはすべてチタン製で強固。ボルト間隔は適切で、ランナウトの恐怖を感じるセクションは個人的にはありませんでした。終了点はロープスリングとチタンリングで、どの終了点も懸垂下降の支点にになります。
トンサイやライレイの人気課題のようにホールドがツルツルしていることはなく、リーチがないとムーブをおこせない部分もありませんでした。(僕は175センチ、パートナーのまきちゃんは154センチです)
ふだん瑞牆や小川山といった花崗岩でのぼっていて、石灰岩の傾斜に慣れていない僕たちでも割と余裕をもって登ることが出来ました。
ここまで書けばなんとなく察してもらえると思いますが、5.11b/cのマルチにしては登りやすいんじゃないかと思います。日本、海外含め、そんなにたくさんのマルチを登った経験があるわけではないので偉そうなことは言えませんが・・・。
以上の情報も参考にしつつ、登れそうだなと感じたらぜひトライしてみてください!
ただし、アオナンタワーのマルチの核心はクライミングよりむしろその前の準備やアプローチ、そして下降にあるので、この記事を参考にしてみてください。
事前準備|カヤックのレンタル
アオナンタワーへのアプローチの方法は2つ。ロングテールボートのチャーターか、カヤックのレンタルです。ぼく達はカヤックを選択しました。理由は安いからです。
いろんなレンタルボート屋さんで料金を比較したところ、トンサイビーチのボート屋さんが一番安かったです。料金は半日(4時間)で450バーツ、一日(8時間)で800バーツです。場所はGoogleマップを参照してください。
トンサイビーチの端にあり、アオナンタワーからも近いので、ここで借りるのがいいと思います。
ボート屋は朝7時オープン。アオナンタワーは正午くらいから陽があたって熱くなるので、朝一に借りて昼間でに戻るのがいいと思います。カヤックのレンタルが可能かは前日までに確認しておきましょう。
【注意】カヤックを上陸ポイントに繋いでおくためのロープが必要なのでボート屋さんに借りておきましょう。ボート屋さん、けっこう適当なので「貸して」と言わないと貸してくれません。ロープがないと無駄にスリングやカラビナを消費するし、塩水でスリングが濡れるので注意です。
ちなみに、ロングテールボートのチャーターは2000バーツくらいらしいですが、そもそもあまり選択肢になかったので実際の値段はわかりません。チャーターする場合は、アオナンタワーのクライミングのことをわかっている船頭さんを探して頼まないといけません。
登り終わって下降するときにちゃんと迎えにきてくれるのか、連絡方法はどうするのか?すべてクリアにしておかないと遭難しちゃうかも。
クラビのタイ人の英語は人によってかなり差があるんですが、理解してなくてもわかってるような対応されることが結構あるので注意です。
アオナンタワーを登る際の注意点
アオナンタワーは、アオナンビーチとライレイウエストビーチの中間にあります。ロングテールボートの運行ルート上にあるため、常にボートのエンジン音が鳴り響いています。
ボートのエンジン音に加え、1ピッチ目、3ピッチ目は30mと長いこともあり、お互いの声はほぼ聞こえなくなります。
コールしなくても、安全にビレイができるように合図や決め事を事前に確認しておく必要があります。ある意味、このボートノイズがひとつの核心といえます。
ちなみに、トポには70メートル必要とありますが、現地ガイドに聞いたところ60メートルでいけるとのこと。実際にぼくたちは60mロープ1本で登り、下降しました。アオナンタワーを登るためにわざわざ70メートルロープを買う必要ありません。
トンサイビーチ〜アオナンタワー(カヤック移動)
7:00 ボート屋に到着。事前に確認していた通り、7:00からボート屋はやっていました。
2人用のカヤックをレンタルして出発。靴などのちょっとした荷物は預かってくれました。(ロッカーとかはなく、ただ置いておいてくれるだけです。保証もないので貴重品はNG)
7:25 カヤックでトンサイビーチ出発。アオナンタワーを目指します。パドルを漕ぐとけっこう荷物が濡れるので濡らしたくないギアはビニル袋などに入れておいたほうがいいです。
7:45 アオナンタワーに到着。この日の満潮は4:59と11:30なので、7:45は真ん中くらいかな?
上陸ポイントにはハシゴやフィックスロープが設置されています。
波でフラフラするアンバランスなカヤックから、ハシゴを使って上陸するのはけっこう大変。
1人が空身で登り、上でセルフをとって荷物を引き上げました。
上陸〜取り付きのトラバース
荷物を引き上げ、あまり広くないテラスでギア類を整理。
上陸ポイントから取り付きまで10メートル弱のトラバースがあります。フィックスロープがはってあってビレイするまでもないトラバースですが、どうせロープをさばくことになるので足場の良いここからロープを結びました。
8:55 1ピッチ目の取り付きに到着。上陸ポイントについたのが7:45なので、カヤックを固定したり、荷物を引き上げたりで1時間くらい使ってしまいました。
ボートレンタルは半日料金と1日料金がありますが、半日で済ませたいならここでもたつかない方がいいです。
【注意】ここからは多少のルートのネタバレを含みます。見たくない人は読み飛ばしてください。懸垂下降の項目については、安全上大切なことが書かれているので読んでおいたほうが良いかも。
Orange Chandelier 3pitch 6c のクライミングについて
pitch 1|32m, 6b(リード:まき)
3ピッチ目の中で、このピッチが1番長く32m。グレードは6b(5.10d)と優しいけれど、取り付きに立ってみるとそれなりに傾斜があり、緊張しました。
難しいところはなかったけれど、1ピッチ目ということもありめちゃくちゃ力みながらのクライミング。内容は易しいし休めるので、傾斜に疲れながらもオンサイトできました。
pitch 2|18m, 6b+(リード:まき)
本当は1ピッチ目だけリードで登る予定だったけど、のりさんのプッシュもあり2ピッチ目もリードで行くことに。
すぐ上に見えるのは小ハング。その後もハング超えが続いておりかなりビビりましたが、6b+(5.11a)というグレードでオーバーハングということは、つまりホールドは絶対にガバ。
登ってみれば2ピッチ目が1番簡単だったと思います。リードをおすすめしてくれたノリさん、ありがとう。お誕生日にこの特別なロケーションのルートを登るという、最高に楽しい体験ができました。
pitch 3|25m, 6c(リード:のり)
最終ピッチ。グレード的には核心のぴっちです。
まきちゃんは誕生日だし、調子も悪くなさそうなので3ピッチ目もリードをするか聞いたんですが、僕にリードをゆずってくれました。
出だしからどっかぶりのオーバーハング。でもホールドはドガバなのでガシカシと登っていきます。
核心は終了点手前のセクション。25mのロングルートで疲れた頃に、ガバでなくインカットしていないカチ。身体のポジションで効かせて持つ感じです。
直上できそうでできないので、ルートファインディングが必要です。ここでホールドを探す余裕がないと厳しくなります。
序盤、中間セクションが簡単すぎてほぼレストせずに登っていたら、最後に予想していない核心がきてびっくりしましたが、落ち着いて登り切りました。
クラビ旅行のためにジムで持久力トレーニングしておいてよかった・・・笑
ということで、無事チームオンサイト。
3ピッチ目の終了点はテラスではなく宙釣り常態。フォローのまきちゃんが登り、記念撮影をしたら下降をはじめます。
懸垂下降
全ピッチの終了点はロープスリングとチタンリングで作られています。このリングで懸垂下降していくわけですが、ここでポイントがいくつかあります。
オレンジシャンデリアは緩傾斜が続くルートなので、30メートル懸垂下降すると壁から離れてしまいます。ところどころクイックドローをセットしロープをかけながら下降しないと空中で身動きとれなくなるので、注意して下さい。
もうひとつはロープを濡らさないためのコツです。1P目の取り付きは海面から5mくらい上にあります。最後の懸垂が終わった後ロープをひくと、ロープは海に落ちてしまいます。
僕たちは捨てビナを用意しておいて2箇所に残置し、片側のロープをかけてロープをひくことでロープを濡らさずに回収しました。
まとめ
クラビの5つ星マルチピッチルート「オレンジシャンデリア」についての紹介でした。
事前準備と情報収集をしっかりとしておいたお陰で、トラブルなく終えることができました。よかったよかった。
実を言うと、動画の撮影などをしていたら思ったより時間を使ってしまい、カヤックのレンタル時間を1.5時間ほどオーバーしてしまいました。超過料金は150バーツ(700円くらい)
クラビでクライミングする予定のある人は是非のぼってみてください!